横領事件の報道について
今日、ある看護師さんと話になりまして、「どんな仕事が多いんですか」って聞かれたものですから、「債務整理とか、相続とか、成年後見とか」って答えると、「債務整理って問題になってますよね。」って言われました。ちょっと突っ込んで、「問題っていうと・・・」って聞いてみると、「弁護士さんが悪いことしているみたいな・・・」というご返事。
弁護士であれ司法書士であれ、債務整理を扱う法律家のイメージが堕ちてしまうのはとても残念です。私の周りもそうですが、儲けになる、ならないではなくて、善意で一生懸命やっている人が多いので。
さて、ご存知のとおり、富山県でとんでもない事件がありました。以下は読売オンラインニュースからの引用です。
司法書士が過払金横領事件 和解書原本渡さず
司法書士が利息制限法の上限を超える金利分(過払い金)を消費者金融から回収しながら、依頼人に支払わず横領した事件で、逮捕された山田陽一容疑者(41)が全額を着服する際、日本司法書士会連合会の指針に従わず、被害者の女性に口頭で処理が済んだことを伝えていたことが、関係者の話でわかった。指針に沿えば、過払い金額が書き込まれた和解書原本を渡さなければならず、発覚を避けるためとみられる。小矢部署は、同様の手口で横領行為を繰り返していたとみて調べている。
捜査関係者によると、山田容疑者は、消費者金融から女性の過払い金を受け取り、和解書などがあったにもかかわらず、女性には手渡していなかった。
山田容疑者は被害者に、借金を帳消しにする代わりに金利の返還もない「ゼロ和解」を装い、過払い金を着服していたことがすでに判明しており、県司法書士会によると、同じ手口による被害は、この女性を含め、約10人、計800万円に上る。いずれも法律などの知識に乏しい依頼人につけ込み、業務上のルールを逸脱した行為で、過払い金の横領を繰り返していたとみられる。
日本司法書士会連合会の指針「司法書士倫理」によると、依頼された業務を完了した際は、和解書の原本などの書類や関係物品を速やかに依頼者に渡さなければならないとしている。県司法書士会の山本英介会長は「代理権を悪用した、司法書士としてあるまじき行為」と話している。
富山地方法務局は今後、山田容疑者から事情を聞いた上で処分する方針。法務局は、最大で3年間の業務禁止命令を出すことができる。
(2010年2月6日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/toyama/news/20100206-OYT8T00213.htm?from=nwlb
情けない事件です。ただ、この読売の報道には少しクレームをつけさせてください。
まず、「司法書士倫理」には依頼者に和解書原本を返還しなければならないとする規定はありません。
次に、日本司法書士会連合会が平成21年12月16日第6回理事会で決定した「債務整理事件の処理に関する指針」の第13に「債務整理事件が終了したときは、遅滞なく、費用の精算をし、依頼者から預かった書類及び依頼者のために取得又は受領した書類等を返還するものとする。」とあります。
この「依頼者のために取得又は受領した書類等を返還するものとする」という部分をもって(条文を確認したかどうかは別であくまで「関係者の話で」)、読売の記者は、和解書原本を依頼人に返還する義務があると判断したのではないかと思われます。
この「債務整理事件の処理に関する指針」について、同時に連合会会長からは「会員の執務を直接拘束する規範ではありません」とする文書が出ています。私は、指針はあくまで指針であることから、和解書の原本返還が司法書士の義務であるとは言い切れないと思います。ちなみに、当事務所では、和解書原本や判決正本は事務所で保管し、依頼者には写しを手渡すようにしてきました。後日紛争が生じた場合の証拠の保存という意味合いや債務不履行が生じた場合の執行の必要性から、依頼者の承諾を得てそのようにしております。
どうもこの記事のニュアンスだと、山田容疑者は原本どころか写しさえ渡していなかったようですね。そもそも、原本を渡さないのが問題ではなくて、偽造したこと及び横領したことが問題だと思うのですが・・・・、いかがでしょう。
「こいつ、偽造しとるんちゃうか」なんて依頼者に思われたくないですから、これまで以上に丁寧に報告しないとね。(桐)
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