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2024年8月 1日 (木)

遺言と遺留分で悩む

 2024年8月1日(火)、おつかれさまです。

 最近、遺言に関係する仕事が増えて、遺留分について考える機会が多いのですが、共同相続人間の関係が悪く遺留分侵害額請求されそうな場合に、遺言についてどう助言したらいいのか迷います。

(1) 遺産としては田舎の古い住宅とその敷地が主。預金はほんのわずかで、周辺に多少の田畑がある。遺言者は、離婚して子どもを連れて戻ってきて、一緒に暮らしてくれる末娘に家を残してやりたい。

 姉たちは決して裕福とは言えないが、嫁ぎ先でそこそこの生活をしている。姉妹関係は最悪で、遺留分侵害額を請求されるとどうしても宅地の評価額に食い込んでしまう。

 親にも末娘にも貯蓄はなく、唯一の財産と言っていい家を処分しないと遺留分侵害額を払えそうにない。遺留分減殺から遺留分侵害額という金銭債権になったものの、払えないものは払えない。

 ここで全財産を末娘にという遺言を作ったら、姉たちが怒りそう。でも、遺言を作らず、遺産分割協議に任せるとしたら、家の名義を末娘にできるかどうかわからない。

 遺言書に遺留分侵害請求額を認めないと書いたとしても、その部分は無効です。

(2) 遺産は預貯金だけ、といってもわずかな金額。判例上は葬儀や法要の費用は喪主・祭祀承継者の負担だが、遺言者は、喪主・祭祀承継を嫁に行った娘にやってほしい。わずかな預金も全額、娘にもらってほしい。

 跡取り息子と他にも息子がいるのに、わざわざ娘に喪主を頼みたいというぐらいだから、息子たちには一円もやりたくない。とは言っても遺留分を否定することはできないから困る。

 「葬儀代及び祭祀承継費用は遺産の負担とする」と遺言で明確にすれば、これらの費用は遺留分の計算から除外できるのであろうか。

 遺留分侵害額請求が任意に請求して金額や支払い方法について合意できればいいのですが、合意できなければ家庭裁判所の調停で話し合い、不調に終われば審判に移行せずに、地裁に民事訴訟を起こすことになります。

 実質、遺産分割のようになってしまうことが多く、その場合、遺留分減殺請求ではなく形式的にも遺産分割調停として扱ってもいいのでやないかと思うのですが、いかがでしょう。(桐)

 

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