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2024年10月 9日 (水)

遺留分侵害額請求に対して不動産で支払う場合

 2024年10月9日(水)、おつかれさまです。

 改正民法が2019年(令和元年)7月1日に施行され、ご存じのとおり遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求に改められました。

 遺留分減殺請求権は物権的効力を有するとされ、生前贈与や死因贈与、遺贈や相続させる旨の遺言によって、すでにAに移転していた所有権は、Bが遺留分減殺請求権を行使することによって、Bに遺留分の限度で所有権が一部移転し、不動産は共有状態になります。

 全財産を長男Aに相続させるという遺言の場合、登記記録上、相続を登記原因としていったんAの単有となり、次に遺留分減殺を登記原因としてAとBの共有名義になります。この共有を解消する手続は共有物分割によると考えられています。

 ただし、相続人全員により遺産分割協議が行われ、共有を解消することが合意された場合は、遺産分割を登記原因として単有にすることも認められています。

 こうして令和元年7月1日より前に開始した相続については、遺留分減殺請求権の物権的効力によって権利行使と同時に共有となり、共有物分割若しくは遺産分割により共有を解消することになるわけです。

 しかし、令和元年7月1日以降は、金銭請求権に過ぎない遺留分侵害額請求に改められたことで、共有状態は生じません。

 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)(法務省民二第68号 令和元年6月27日)には、「上記改正により、従前の遺留分減殺を登記原因とする所有権の移転の登記の申請は、受理することができないこととなる。この改正後の規定は、改正法の施行の日(令和元年7月1日)以後に開始した相続について適用され、同日前に開始した相続については、なお従前の例によるとされた(改正法附則第2条)。」と明記されています。

 そこで疑問ですが、Aに対してBの遺留分侵害額請求権が行使されたものの、Aが金銭の支払いを拒否し一部不動産の所有権を移転することで合意された場合、登記原因はどうしたらいいのでしょう。

 相続人がAとBだけならなんとでもなりそうですが、その他の共同相続人が協力してくれない場合はどうしたら・・・・解決したら、また改めて。(桐)

 

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