成年後見人とワクチン接種の同意
2024年10月10日(木)、おつかれさまです。
今日は朝一番で井原市へ。秋らしい気持ちのいい風景が広がっています。
任意被後見人に同行して広島県福山市の大病院を受診してきました。地元の病院で肺に影が見つかって大病院で検査せよとの紹介状をいただいたのですが、今月91歳になる方です、誤嚥性肺炎と尿路感染症を繰り返している方ですから、たとえ癌であったとしても積極的な治療は、私は望みません。
この方と私の付き合いは14年目に入りました。ご家族は遠方にいらっしゃいますが、長年にわたり絶縁状態です。お元気な頃から、むしろ自ら家族を避けて遠ざけてきたと言った方が的確かもしれません。
インフォームド・コンセントとは、あくまで本人の同意を求めるものです。もし「家族の同意」なんて言葉を出したら、この方は認知症になった今でも、「なんでわしのことに家族が関係するんや」とかなり反発されるでしょうね。
とりあえず、医師の説明をわかりやすく伝え、とりあえず経過を見ていくということになったのですが、たぶんご本人は2~3日も経てば忘れているでしょうね。そんなもんです。
この方の件に限らず、10月から施設や病院に行く度にコロナとインフルのワクチン接種の希望を聞かれます。ほぼ毎日のように書類で、電話で確認されます。ご存じのとおり、成年後見人には医療行為の同意権はありません。でも親族だってないですよね。
ただし、予防接種法という法律があります。
(予防接種の勧奨)
第八条 市町村長又は都道府県知事は、定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種の対象者に対し、これらの予防接種を受けることを勧奨するものとする。
2 市町村長又は都道府県知事は、前項の対象者が十六歳未満の者又は成年被後見人であるときは、その保護者に対し、その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種を受けさせることを勧奨するものとする。
(予防接種を受ける努力義務)
第九条 定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(B類疾病のうち当該疾病にかかった場合の病状の程度を考慮して厚生労働大臣が定めるもの(第二十四条第六号及び第二十八条において「特定B類疾病」という。)に係るものを除く。次項及び次条において同じ。)の対象者は、これらの予防接種を受けるよう努めなければならない。
2 前項の対象者が十六歳未満の者又は成年被後見人であるときは、その保護者は、その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種を受けさせるため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
同法第2条第7項は、「この法律において「保護者」とは、親権を行う者又は後見人をいう。」と規定しています。つまり、成年後見人は被後見人が予防接種を受けるための必要な措置を講ずる努力義務を負っています。
そこで、厚生労働省健康局健康課予防接種室から各都道府県衛星主管部(局)に宛てた令和3年3月24日付事務連絡が発出されています。これによると、成年後見人は被後見人に代わって同意ができるという取扱いです。
保佐人・補助人・任意後見人に同意する権限はないのですが、施設や医療機関から必ず意向は聞かれます。同業者のみなさんはどうされているのでしょう。
私は、本人の身体的状態によって、接種すべきかやめておくべきかを判断しています。これは権限があるかないかとは別の話です。
実はコロナワクチン接種をきっかけに体力が一気に低下して回復せずに亡くなった方もいて、後悔しているので、後見・保佐・補助の権限に関係なく体力的に弱っている方の場合は接種を避けるように私自身の意向を伝えています。
今回の定期接種はあくまで任意なので、断った場合でも施設側は「わかりました」の一言で、終わることが多いです。本人が理解して判断できればいいのですが、補助はともかく保佐の場合はほとんど無理だと、私は思います。(桐)
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