63条返還金と78条徴収金
2024年12月3日(火)、おつかれさまです。
都会で体を壊して職を失った方が、就職できるまでの間生活保護を受給したいというケースで、田舎に亡くなった親名義の不動産があった場合は生活保護は受給できないのか、という質問がありました。
生活保護法の条文を読んでみると、
第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あるゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを条件として行われる。
2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
という一般的に「保護の補足性」と呼ばれる規定があります。
利用し得る資産があればその活用を条件として保護は行われるが、急迫の事由がある場合は、必ずしもその活用が前提となるものではありません。
前述の質問の回答としては、相続不動産があっても急迫の事由があれば保護を受けることができる、ということになります。
第63条 被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
いわゆる "63条返還金" の規定です。急迫の事由があって保護を受けた場合は、できる限り早く相続不動産を売却するなどして、これまで受領した保護費を返還してくださいね、ということです。
では、急迫の事由とはどういうことかというと、自治体によって多少異なるかと思いますが、倉敷市の場合は現預金が3万円程度で、他に当面の収入の見込みがない状態であるとされているようです。
”63条返還金” と似て非なるものが "78条徴収金" です。
第78条 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額には百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。
不正受給は最大4割加算で返還しなければなりません。収入や援助があったにもかかわらず、それを隠して受給していて、後で発覚する場合が多いようです。
と、ここまで書いて、全く同じ内容の記事を2022年5月28日に書いていたことに気づきました。63条返還金も78条徴収金も実務の中でしょっちゅう出会うので、ご参考までに。(桐)
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