非嫡の相続分改正の射程範囲
2025年2月3日(月)、おつかれさまです。
けっこう複雑な数次相続で、珍しい事案に当たってしまいました。登記名義人の死亡が平成14年、遺産分割未了のまま、相続人の何人かが亡くなって、その相続人も亡くなって・・・孫らと叔父伯母らが遺産分割協議をしないといけないケースです。
何が珍しいかというと、叔父の一人が非嫡出子です。
平成25年12月11日に施行された改正民法では、
民法900条4項
子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
(改正前)
子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
平成25年9月4日最高裁大法廷決定により下線部分が違憲とされたために、法改正により非嫡出子の相続分も嫡出子と同じになりました。
問題は、その射程です。
新法では、最高裁決定の翌日の平成25年9月5日以降に開始した相続について適用するとしています(附則第2項)。
では、平成25年9月5日よりも前に開始した相続についてはどうか。
決定は、「遅くとも平成13年7月においては違憲であった」とし、「違憲判断は、平成13年7月から本決定の間に開始した他の相続につき、本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的になった法律関係に影響を及ぼすものではない」と判示しています。
そのため、平成13年7月1日から平成25年9月4日の間に開始した相続については、確定的な法律関係が形成されていない場合は、違憲規定は適用されません。
したがって、最高裁決定の事実上の拘束力により、平成13年7月1日以降の相続で遺産分割協議等が成立していないのであれば、非嫡出子と嫡出子の相続分は同等となります。
ということで、本件の相続開始は平成14年であり、今から遺産分割協議をするのですから、最高裁決定の射程に入ることになります。
単純に改正法の施行日(平成25年12月11日)の前後ではなく、違憲決定(平成25年9月5日)の前後でもなく、違憲決定が遅くともこの頃には違憲とした日(平成13年7月1日)の前後によって、変わってくるということです。
珍しい事案でしたので、自身の備忘録として。(桐)
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