成年後見

2025年2月 9日 (日)

リーガルサポートの全件原本確認

 2025年2月9日(日)、おつかれさまです。

 成年後見に限らず他人様の財産を預かる仕事で業務上横領などということがあってはいけません。直近の月報司法書士に、事務員が横領し司法書士が監督責任を問われて1か月の業務停止処分になった事案が公表されていました。

 本職の横領などとんでもない話ですが、事務員任せで使い込みに気づかないというケースもあります。後者の場合、司法書士は被害額を賠償し、かつ監督責任を問われて業務停止処分を受けるのですから、たまったものではありません。

 どうすれば横領事件を防ぐことができるでしょう。うちでは多くの後見事件を受けていますが、特定の事務員を担当制で張り付けているわけではありません。本職であれ事務員であれ、1件の事案に複数の人間が関わることが大事かなと思います。

 被後見人等口座のキャッシュカードは作りません。費用の請求が郵便で届いたり電話で依頼があったりすると、事務員が銀行の出金伝票に口座番号と金額を書いて、私が請求書と預金残高を照らし合わせて署名押印します。

 銀行印はどの後見等事案でも共通で、常に私が持っていて事務員が押すことは全くありません。毎朝10枚前後、多いときは20枚を超える出金伝票に署名押印しますが、不適切な出金があればそれはすべて私の責任ということになります。

 他の方のやり方を知りませんが、私はこういうアナログな手法こそが手間はかかっても混乱が少なくていいと思います。15時までしか出金できないので、緊急にお金が必要なときは立て替えざるをえませんが。

 ところで、本日、リーガルサポートの役員2名が来所され、通帳等の全件原本確認を実施しました。日曜日なのにご苦労様です。半年に1回リーガルに報告している預金残高と実際の通帳の残高を突合し、報告が虚偽でないことを確認します。

 個人情報保護の観点やリーガルサポートの権限についての疑問から、私はこの全件原本確認に賛成しているわけではありません。だって、同業者を疑って調査するわけですから、正直そこまでやる必要があるのかと強く疑問に思っています。

 確認作業をする方もたいへんだと思います。警察でいえば監察官、相棒でいえば大河内さんみたいなもので、現場でクソ真面目に仕事をしている人間にしてみれば、報告を疑われているわけで決していい思いはしません。

 まあ、それについては言い出せばきりがないので、またの機会のネタに置いといて、今日の全件原本確認は事前準備をしてくれた事務員さんのおかげで、1時間15分ほどで問題なく終了しました。とりあえずご報告まで。(桐)

 

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2025年2月 7日 (金)

後見制度はどうなる?

 2025年2月6日(木)、おつかれさまです。

 障害者施設に入所する重度知的障害者のお母さんが、3か月に1回、当事務所にお見えになります。昨日も来てくださったのですが、私はいつも事務所を不在にしていて申し訳なく思っています。

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 金光教のみかげ饅頭をよくいただきます。いつもありがとうございます。このぎっしり感がいいんですよね。どうぞ皆様にも、おかげがありますように。

 さて、お母さんは当初、後見人をつけることにあまり乗り気ではなかったようです。確かに息子さんは障害者施設に入所して、施設職員の支援でこれまで何とかやってこれていますから。

 でも、離婚した元夫が死亡して、自分の子と元夫の再婚相手の子が遺産分割協議をしなければならなくなりました。これは後見人をつけないと無理です。かなりの重度障害ですから。

 先日、この息子さんと一緒に面会した同じ施設の女性障害者も全く同じパターンです。施設で問題なく生活してきましたが。亡母の兄弟が死亡して共同相続人から遺産分割調停を起こされたのがきっかけで、私が後見人に就任しました。

 施設で安定的に暮らしていた障害者が、一定の法的スキルを持った法定代理人を必要とするときに、後見人に選任されるのは一つのパターンと言っていいと思います。

 こういう案件は、後見人としては最初の1年間がメチャクチャたいへんで、それが終わったら取得した財産を管理するだけになります。普段の生活は施設が見てくれていますから。

 確かにこういう案件は一時的に後見人をつけて、問題が解決したら退任するというような制度があってもいいのかもしれないと思います。いろいろ検討されているようですが、これからの後見制度はどう変わっていくんでしょうね。(桐)

 

 

 

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2024年10月23日 (水)

被後見人等の選挙権行使について

 2024年10月23日(水)、おつかれさまです。

 インフルエンザ・コロナのワクチン接種と、岡山県知事と衆議院議員の選挙がいっぺんに来て大忙しです。ワクチン接種については10月10日の記事「成年後見人とワクチン接種の同意」に書いたとおりです。

 予防接種法上、本人にワクチン接種の努力義務があり、保護者である成年後見人は「予防接種を受けさせるため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とあります。

 保佐人・補助人・任意後見人は、後見人のように同意権はないものの、本人の意思を確認できれば、予診票を代筆するものとして扱われています。

 他方、選挙権の行使についてはどうでしょう。

 平成25年3月14日東京地裁判決が、当時被後見人に選挙権を認めていなかった公職選挙法を違憲とし、その後の法改正で被後見人にも選挙権が認められました。

 でも、現実に被後見人の選挙権行使のための具体的施策が十分かといえば、そうではありません。投票所に出かけての代理投票、在宅での郵便投票、施設での投票などが、制度としてはありますが、いずれも条件がありハードルは高いと言わざるをえません。

 今日は施設入所者10人の方を順次訪問して、ワクチン接種と選挙の意思を確認して回りました。ある特養の被補助人さんが選挙に行きたいというので、私の車で期日前投票に行ってきました。

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 倉敷市のお隣の浅口市の期日前投票所です。足元が元気な方なので助かります。投票を終えて実に満足げな表情でした。

 もっと多くの方に投票の機会を保証したいのですが、施設に投票所を開設するのは困難でしょう。現状では、投票意思を持っていて動ける方を家族や後見人等が投票所へお連れするしかありません。

 もう一人、別の施設の被補助人ですが、友人が投票所に連れていく約束をしていたのですが、車いすの方を安全に連れていく自信がないとしてその友人が断念をされたようです。

 投票率を上げるために郵送投票とかオンライン投票とかスーパーでの投票なんかも検討されるこの頃です。体の不自由な方に選挙権行使の機会を、もう少しなんとかできないかと思うのですが。(桐)

 

 

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2024年10月10日 (木)

成年後見人とワクチン接種の同意

 2024年10月10日(木)、おつかれさまです。

 今日は朝一番で井原市へ。秋らしい気持ちのいい風景が広がっています。

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 任意被後見人に同行して広島県福山市の大病院を受診してきました。地元の病院で肺に影が見つかって大病院で検査せよとの紹介状をいただいたのですが、今月91歳になる方です、誤嚥性肺炎と尿路感染症を繰り返している方ですから、たとえ癌であったとしても積極的な治療は、私は望みません。

 この方と私の付き合いは14年目に入りました。ご家族は遠方にいらっしゃいますが、長年にわたり絶縁状態です。お元気な頃から、むしろ自ら家族を避けて遠ざけてきたと言った方が的確かもしれません。

 インフォームド・コンセントとは、あくまで本人の同意を求めるものです。もし「家族の同意」なんて言葉を出したら、この方は認知症になった今でも、「なんでわしのことに家族が関係するんや」とかなり反発されるでしょうね。

 とりあえず、医師の説明をわかりやすく伝え、とりあえず経過を見ていくということになったのですが、たぶんご本人は2~3日も経てば忘れているでしょうね。そんなもんです。

 この方の件に限らず、10月から施設や病院に行く度にコロナとインフルのワクチン接種の希望を聞かれます。ほぼ毎日のように書類で、電話で確認されます。ご存じのとおり、成年後見人には医療行為の同意権はありません。でも親族だってないですよね。

 ただし、予防接種法という法律があります。

(予防接種の勧奨)

第八条 市町村長又は都道府県知事は、定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種の対象者に対し、これらの予防接種を受けることを勧奨するものとする。

2 市町村長又は都道府県知事は、前項の対象者が十六歳未満の者又は成年被後見人であるときは、その保護者に対し、その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種を受けさせることを勧奨するものとする。

(予防接種を受ける努力義務)

第九条 定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(B類疾病のうち当該疾病にかかった場合の病状の程度を考慮して厚生労働大臣が定めるもの(第二十四条第六号及び第二十八条において「特定B類疾病」という。)に係るものを除く。次項及び次条において同じ。)の対象者は、これらの予防接種を受けるよう努めなければならない。

2 前項の対象者が十六歳未満の者又は成年被後見人であるときは、その保護者は、その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種を受けさせるため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 同法第2条第7項は、「この法律において「保護者」とは、親権を行う者又は後見人をいう。」と規定しています。つまり、成年後見人は被後見人が予防接種を受けるための必要な措置を講ずる努力義務を負っています。

 そこで、厚生労働省健康局健康課予防接種室から各都道府県衛星主管部(局)に宛てた令和3年3月24日付事務連絡が発出されています。これによると、成年後見人は被後見人に代わって同意ができるという取扱いです。

 保佐人・補助人・任意後見人に同意する権限はないのですが、施設や医療機関から必ず意向は聞かれます。同業者のみなさんはどうされているのでしょう。

 私は、本人の身体的状態によって、接種すべきかやめておくべきかを判断しています。これは権限があるかないかとは別の話です。

 実はコロナワクチン接種をきっかけに体力が一気に低下して回復せずに亡くなった方もいて、後悔しているので、後見・保佐・補助の権限に関係なく体力的に弱っている方の場合は接種を避けるように私自身の意向を伝えています。

 今回の定期接種はあくまで任意なので、断った場合でも施設側は「わかりました」の一言で、終わることが多いです。本人が理解して判断できればいいのですが、補助はともかく保佐の場合はほとんど無理だと、私は思います。(桐)

 

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2024年9月 7日 (土)

補助を広く

 2024年9月7日(土)、おつかれさまです。土曜日ですが、今日も普通にお仕事でした。

 さて、先月補助開始審判が確定した被補助人の1か月報告を作成しました。事務員さんが起案してくれるので助かります。

民法第15条第1項

 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。

 私はこの「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分」というのが、よくわかりません。対象の範囲のとらえ方に、職種によってかなり大きな差があると思います。

 一般的に法律家は狭くとらえがちで、「この人に精神上の障害はないから後見制度は使えない」と言ってしまうケースは多いと思います。逆に介護関係者は、精神上の障害の有無に関係なく成年後見制度に持ってこようとする方が多いです。

 専門の医師に医学的に判断してもらうしかないのでしょうが、とはいっても精神科医も、診断に極めて厳密で慎重な方と、「介護者が困るだろうから」とおおらかで理解ある診断を出してくれる方と、もう千差万別です。

 困るのはパーキンソン症候群の方です。これだけでは精神上の障害とは言えません。うつや認知症を併発している方もいますが、多くの方は頭はしっかりされていて、ただ体が動かなかったり、言葉が出にくかったり。

 以前、複数の病院で暴れて警察を呼ばれた入院患者がいました。看護師に殺されるとか、海に捨てられるとか、妄想を持っていました。統合失調症が疑われましたが、専門病院で1か月薬を調整してみたら、寛解しました。

 専門医曰く、「認知症もないし、精神病じゃないから診断書は書けないよ。パーキンソンの薬が合ってなかっただけだから」。診断書を書いてくれないと本人の生活が成り立たないことを説明して、なんとか成年後見用の診断書にチェックをつけてもらったことがあります。

 冒頭の1か月報告の方もパーキンソンで、頭はしっかりしているけど体が動かない。独居で在宅介護と通所介護によって生きています。年金を降ろしに銀行に行くのもたいへんで、コンビニ払いの電気・ガス・水道の支払いが滞りがち。

 先週は実際にガスを止められ、昨日は電気を止めますと、私の事務所に電話がかかってきたところです。請求書を自宅に郵送しているにもかかわらず、料金の支払いがないので供給を止める。事業者としては当たり前です。

 ヘルパーさんもお金のことは踏み込むことができません。どうしても補助人が必要です。ライフラインの料金を口座引落にしたり、生活費を届けたり、介護関係の費用を払ったり、金銭管理をする人が必要です。

 判断能力は十分あるんですが、無理くり「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分」として補助を使わざるを得ません。生活保護やギリギリの年金で生活している方が多く、任意後見・任意代理は費用面で使えません。

 独居で低所得で高齢で身体的障害を抱えている方、補助を広く考えて使わざるをえない場面は非常に多いと思います。本人の同意がありさえすれば、精神上の障害や事理弁識能力によらず、補助の制度が使えるようになったらいいと思います。(桐)

 

 

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2024年1月22日 (月)

17年のお付き合いでした

 2024年1月22日(月)、おつかれさまです。明日から急激に寒くなるそうです。

 さて、業務日誌です。

 Mさん、満73歳はあまりにも若すぎます。私とは17年前からの付き合いで、当時50代の彼女はアパート暮らしで、若年性のアルツハイマー型認知症と診断され、糖尿病と心臓疾患がありました。

 認知症の進行は意外と遅く、むしろ身体的なレベル低下のほうが進んで、介護が必要な状態となり、生活保護対応のグループホームへ入所してもらいました。

 波乱万丈の人生を歩んできた方ですが、つらいことも多かったようで、面会時には泣き言もよく言っていました。その次の瞬間には、泣きながら冗談を言い合って、大笑いするというパターンでした。

 茶目っ気たっぷりの性格で、私のことをずいぶんからかってくれました。それが不思議と、からかわれても全然悪い気がしない。どうぞおちょくってください、という感じのお付き合いでした。

 誕生日にはお菓子を持って訪問しました。外出許可をもらって車椅子でとんかつを食べに行ったことも。とんかつを食べながら、彼女は泣いていました。

 施設から出られず、面会も禁止されたコロナの3年間は、精神的にきつかったと思います。ショックを受けないようにと、お母さんが亡くなったことも、ご長男が亡くなったことも内緒にしていました。

 いいお葬式でした。親族に囲まれて、読経の間も小さなお孫さんがホールを走り回って、こういう葬儀もいいものです。

 被後見人等の火葬では、ほとんどの場合、私が収骨します。でも、Mさんの場合はその必要がありません。その方がいいです。

 どうぞ、安らかにお眠りください。(桐)

 

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2023年11月16日 (木)

給付金確認書 被後見人等への送付先

 2023年11月16日(木)、おつかれさまです。

 今朝の山陽新聞にこんな記事が。

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 非課税世帯に7万円を年内給付するため、政府が自治体に対して2023年度補正予算を組むように、2日と10日に異例の通知を出したそうです。

 こちらは「成年被後見人・被保佐人・被補助人に係る物価高騰重点支援給付金 給付手続きのご協力について(依頼)」。令和5年11月10日付岡山市福祉援護課長文書です。

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 「成年被後見人・被保佐人・被補助人へ給付金の確認書類を送付するにあたり、法人または士業者が成年後見人・保佐人・補助人になられている場合で、別紙の申出書による申出があった場合に限り、申出のあった被後見人等に係る給付金の確認書類を後見人等に送付いたします。」

 この文書を市の担当者から直接メールでいただきました。ありがたいですね。できれば倉敷市もこのようにしてほしい。これに関しては送付先変更を想定した手続きが存在しないんですよね。

 これまでも被後見人等の自宅に送られても、受領能力のない方が多いので行方不明になりがちですし、探すのがたいへんでした。そもそも病院や老健にいる方は住民票上の住所には居住していないのが実際なので。

 余談ですが、「本市では基準日を令和5年11月1日とし、基準日時点で住民基本台帳に記載されている世帯主であり、かつ世帯全員の令和5年度の住民税が非課税であることを条件する予定です。」とあります。

 生活保護は同一世帯で給付されている内縁のご夫婦の保佐人をしていますが、住民票上は別世帯になっているので、上記の要件だとそれぞれに給付を受けられそうです。(桐)

 

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2023年11月 9日 (木)

代理行為にあってよかった(任意後見)

 2023年11月9日(木)、おつかさまです。

 令和3年の司法統計によると、後見開始、保佐開始、補助開始、任意後見監督人選任の全国の申立件数の総数は、39,809件。その中で任意後見監督人選任申立は794件にすぎません。

 令和3年と令和29年の各申立件数を比較すると、5年でこれらの申立の総数は35,737件から39,809件へと11.39%増。これに対して任意後見監督人選任申立件数は、5年間で804件から784件へと9.83%減です。

 私見ながら、高梁川日記では、任意後見制度の利用が一向に進まない理由には、制度の複雑さ、わかりにくさ、利用しづらさなどがあると主張してきました。今日もこういうことがありました。

 平成23年に「弁護士が書いた本を読んで任意後見制度に興味を持ったので話を聴きたい」と電話をくださった男性。住所地に近い順に司法書士事務所に片っ端から電話をかけたそうですが、なかなか彼の眼鏡にかなう方がいなかったようでした。

 自分から任意後見制度を利用したいと求めていた方で、私も何度も面会を重ね、その都度ライフプランに注文をつけられて、半年ぐらいかかって公証役場で契約を締結しました。

 2か月に1回、高速道路を使って片道30分以上かけて面会に行き、買い物や外食に行くための運転手としてお付き合いし、怒られるのにも慣れて来た頃、「わしの財産のことをあんたに言うといたほうがええと思うんや」と切り出されました。

 実際の資産額が任意後見契約書の財産目録記載の財産の数倍だったのには驚かされました。「あれ、言ってなかったっけ? まあ、相手がどんな人間かわからんのに、最初から正直に言う馬鹿はおらんやろ」。うーん、クセが強い! 強すぎる!

 10年お付き合いして後見監督人選任申立てをして任意後見人となり、12年経って認知力もADLもかなり低下して介護施設入所となりました。部屋を片づけた業者が段ボールに1箱分の書類を届けてくれ、その中に生命保険の「契約内容のお知らせ」を発見。

 こんなん聞いてないよ~。最初に聞いてないし、財産目録にはずっと上げてないよ~。彼は「あんたは言われたことだけやっとればいいんや」という方でしたから、難しいんですよね、突っ込んで聞くのが。

 不安いっぱいで任意後見契約の代理行為目録を確認して、「保険金の請求」という文言があったので一安心。念のためできるかぎり広い内容にしておいてよかったです。この文言がないと、入院給付金の請求ができないところでした。

 成年後見だとこういう心配がないんですよね。ところが、任意後見では最初の契約締結の時に漏れているとなかなか修正ができない。後見人候補者が同居の家族なら漏らす可能性は低いのですが。

 とにかく幅広い代理行為目録にしていたので、本日無事に入院給付金の請求ができたということです。12年間漏らし続けた財産目録は修正しないとね。(桐)

 

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2023年9月20日 (水)

成年後見 課題は担い手不足

 2023年9月20日(水)、おつかれさまです。

 今日の山陽新聞の朝刊です。

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 岡山県内27の市町村に中核機関が設置されました。しかし、最大の問題は、記事も指摘するとおり後見人の担い手の育成です。

 本日をもって家庭裁判所の役割を終了する70歳超の相方が、退任後は岡山市の市民後見人の講座を受講すると言っていました。

 市民後見人に興味を持つ方々が増えるのはとてもいいことです。しかし、高齢者が高齢者の財産管理をすることよりも、若い担い手を育成することが重要です。

 担い手が圧倒的に不足することは20年前からわかっていたことで、制度設計時になぜ介護保険制度における介護支援専門員(ケアマネ)のように、"後見士” とでもいうべき国家資格を創出しなかったのか疑問です。

 中核機関設置はいいとして、市町村に丸投げするのではなくて、担い手は国が育成すべきだと考えます。(桐)

 

 

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2023年7月19日 (水)

本人管理通帳のコピーをとる一苦労

 2023年7月19日(水)、おつかれさまです。夏です。猛暑です。

 今朝、出勤途中にパシャ、羽化したてのクマゼミです。もう30分早く出社していれば、感動的なシーンが観察できたかも。

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 殻の中では、きっと窮屈だったでしょうね。最近はカエルの鳴き声にも苦情が出るみたいですが、土の中にいた年数と羽化して生きられる日数を考えると、セミに文句は言えません。

 さて、業務日誌です。以前に同趣旨の記事を書いた記憶がありますが、被保佐人・被補助人の預金口座管理についての一考です。

 当事務所では、7月と1月がリーガルサポートへの報告月なので、この時期はたいへんです。一番しんどいのは被保佐人・被補助人が自ら管理している通帳の写しをもらうこと。

 保佐・補助事案は、本人に一定の判断能力があることが前提です。一定の判断能力があれば(なくても)、自分の金銭は自分で管理したい、それは人間の欲求として自然です。

 しかし、管理する側としては、本人のこの先のレベルダウンに備えて、できるだけ広範囲な代理権を早めに持っていたいものです。後見レベルにダウンするのを待っていては、入院費も施設利用料も家賃も支払いができなくなりますから。

 かつて一度だけ、特定の銀行の特定の口座だけを保佐人が管理する代理権を付与してもらったことがありますが、一般的には金融機関との全取引について全面的に管理する権限を求めるようにしています。

 ところが、私の場合、代理行為目録では金融機関との全取引の代理権を付与されているのに、本人から通帳を渡されてないケースが3件あります。

 在宅独居の被保佐人Aさんは、長谷川式簡易評価スケールでは30点満点中の29点。しかし、10代から半世紀に近い間、統合失調症と付き合っています。亡くなったご両親が生まれ変わって市内でうどん屋を営んでいるので、その店を探してほしいと頼まれます。

 Aさんは、入院中に銀行に行けず入院費が払えなくなり弱気になりました。そのため自ら保佐開始の申立人となり、預金口座を管理する代理権を保佐人に付与しました。

 ところが、退院すると強気になって「自分でできます」と通帳を渡してくれません。数年後に再度入院したときに、ようやく一部の通帳を引き渡してもらえました。

 代理権を付与されている以上、実際にその代理権が行使されていなくても、財産目録を調製し、預金通帳の写しを添付しなければなりません。家裁に提出する目的で通帳のコピーをとらせてもらうことさえ、困難で、毎年財産目録を調製できない理由を上申していました。

 現在も自分で使える口座を1つ本人管理にしているので、その通帳の写しをとらせてもらうのに一苦労です。今日はなんとか自宅の近くのコンビニでコピーをさせてもらえました。

 在宅独居の被保佐人Bさんは認知症です。山間の集落で自給自足の生活をしているBさんにとって、預金は持っておくべきものであって決して使うべきものではありません。

 この方は、私が保佐人に就職して1年近くなりますが、未だに通帳を渡してくれません。「人に見せるようなものじゃないから」、そりゃそうです。今日も敗北でした。

 明後日は施設入所したばかりの被補助人Cさんのところへ行って、通帳を一時的に預かってコピーをとらなければなりません。この方は、施設利用料等で日常的に使う口座を一つだけ私に預けて、貯蓄目的で持っているその他の口座は自分で管理しています。

 補助レベルでかなりしっかりしている方なので、こちらも通帳の写しをとる理由について理論武装をして臨まなければ、負けてしまいます。正直、家裁やリーガルサポートへの報告のためにと正面から説得しても「私には関係ない」と拒絶されそうな気がします。

 以上、本人の数年先のことを考えれば、預金の管理について全面的な代理権を付与してもらい、本人の意思を尊重して現時点で本人が保佐人・補助人に預けるとした口座だけを報告の対象としていただければ、通帳を出す出さないで本人とバトルしなくてもすむのですが。

 本当にどうしようもないケースでは、通帳を紛失したとして再発行し保佐の届出をして、ご本人には古い通帳を持ってもらっているケースもありますが、できるだけそういうことはしたくないので、実にしんどいところです。(桐)

 

 P.S 文中「本人から通帳を渡されてないケースが3件」とありますが、正しくは4件でした。(7月22日訂正)

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